
医療業界全体を支え、日本の未来を変えていく──。
そんな壮大なビジョンを掲げ、少数精鋭で取り組むスペシャリスト集団がカケハシの認証・権限管理基盤チームです。
今回は認証・権限管理基盤チームから、PdMの渡部桂太、エンジニアの岩佐幸翠に話を聞きました。チームの成り立ち、日々の業務といった基本的なお話から、認証・権限管理基盤チームが描く未来まで、広く、そして深く語りました。彼らの本気をぜひ感じてください。
認証・権限管理基盤チームの役割

— まず認証・権限管理基盤チームが立ち上がった経緯から教えてください
岩佐:はい、創業時までさかのぼって説明しますね。
当時はクラウド型電子薬歴システム「Musubi」を提供していたカケハシですが、徐々に複数のプロダクトを展開していくようになります。それまでは各々のサービスを早期にグロースさせることを優先していましたが、さらなる飛躍のためにはエンタープライズへのサービス提供が必要となりました。
しかし、エンタープライズ向けの提供には機能・品質の双方で高いハードルがあります。一元的・安全に扱える基盤の整備が求められる一方、プロダクトごとに認証・認可、組織・権限管理、請求・ライセンス管理などの仕組みを開発していくことは非常に難しいわけです。
例えば、お客様にBIツールを提供しているチームでは、組織・権限管理機能を全て内製していました。その後、他のプロダクトでも組織・権限管理機能を提供するニーズが高まりました。他にも、それぞれのチームで内製されていた認証機能に対して、二要素認証や監査ログなどの顧客ニーズが高まりはじめていました。
そこで、2022年頃に各プロダクトでの基盤開発をうまく巻き取って、抽象化し、可用性、セキュリティ、ガバナンスなど、共通の非機能要件を横断的に満たすサブシステム的なものを開発するチームが立ち上がりました。
当初は、既存のプロダクトチームで対応する方法も検討していました。しかし、この領域はSaasの根幹であり、セキュリティを徹底すべき非常に重要な部分です。たとえば、店舗間などでデータが相互に見えないようにする必要があります。そのため、認証・権限管理に特化した専門家だけのチームをつくる方針に切り替え、現在の認証・権限管理基盤チームが生まれました。
たとえば薬局を全国に100店舗を展開していて、エリアごとに適用したい設定が異なる法人さまがあるとします。薬局を並列に管理するのではなく、ツリー状に管理したいときに、お客さま、そしてカケハシのプロダクトチーム、CSチームにとって運用しやすい形を考えながら提供していく“土台”を共通化していくイメージです。

渡部:日本には薬局が6万店舗ほどあり、地域に根ざして2〜3店舗を経営していらっしゃる会社さんもあれば、数千店規模を経営している会社さんもあります。
近年、薬局業界では再編が進んでいて、法人そのものがどんどん大きくなっていく傾向にあります。ガバナンス体系が異なる法人がまとまっていく流れにも柔軟に対応できることがポイントです。
そもそも医療システムなので、ガバナンスが厳しい。今カケハシには代表的なサービスが4つありますが、そのあたりを各プロダクトが個々で対応していくには、エンジニアの知識・技術や会社としてのケイパビリティも必要になります。
そのあたりを横断して全体に対してレバレッジをかけていくことがこのチームの目的です。
「日本の薬局体験をアップデートする」という気持ちを心に
— 認証・権限管理基盤ができることで、ユーザーである薬局側にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
岩佐:たとえば、お客さまから組織情報を提供いただくと、データが一括で各プロダクトに反映・配信されます。各プロダクトではデータを権限管理に活用してもいいし、データ集計に活用してもいい。絞り込み機能にも活用できます。
渡部:この基盤を活用しているMusubiAI在庫管理においては、全国に数百店舗を持つ法人様にもご活用頂いています。エリアマネージャーの方々が関東エリアの薬局実績をスムーズにご覧いただけるレポートは、私たちが構築した情報体系が土台となっています。このレポートを直感的にご利用いただけることこそ、私たちのチームが貢献できている点のひとつと考えています。

— 開発はどのように進んでいるのでしょう?
渡部:チームとしては、まずプロダクトごとの違いを丁寧に整理しながら、共通化を進めています。いきなり全体を変えるのではなく、小さく試しながら進める方針をとっています。
特徴としては、プロダクトチーム、CSチーム、時にはお客様と直接など、さまざまなステークホルダーと連携している点です。当然、調整や意思決定の難易度が高くなるので、全体として納得感の得られる判断を進めていかなければなりません。
チームとして単に仕様を押し付けるのではなく、各チームの「困りごと」や「重視していること」を汲み取りながら、カケハシというプラットフォーム全体で合意形成を進めています。高度なプロダクト・プロジェクトマネジメントスキルが求められますが、開発ロードマップを”見える化”する工夫や判断を委ねるルールも取り入れ、スピードと納得感のバランスを丁寧に設計しているところです。
— 直近のプロジェクトについて、取り組んでいることを教えてください。
渡部:我々のチームで共通の基盤をつくり、各プロダクトで認証する機構をつくっているのですが、我々の扱う医療システムが準拠すべきいわゆる3省2ガイドラインにおいて、2027年には二要素認証が必須化されます。
二要素認証とは、従来のID/PASSに加えて、身分証明や指紋認証といった2つ目の要素が必要になるのですが、今は我々の基盤で対応できるようになることを前提に開発を進めています。
ただ、薬局側ではカケハシのプロダクト以外にもさまざまなサービスが導入されていて、当然ながら二要素認証の対象となります。そのときにカケハシのプロダクトだけ独自の二要素認証だと薬局側での業務体験としてはつじつまが合わなくなってしまいます。そこで、多岐にわたるステークホルダーと情報交換をして方向性を議論しながら進めているところです。
岩佐:これまでに数回、厚生労働省の方とのミーティングにもエンジニアを含めて出席しました。
社内でもエンジニアが率先して調査をし、PdMと相談しながら「一番現実性が高いのはこの3つです」といった共有をしたり「可能性としては、こういう選択肢もとれるかもしれない」と方向性を決める。その上で、我々から厚生労働省の皆様へ提案させていただくイメージですね。
— 日本の薬局体験をアップデートする役割を担っているといっても過言ではないわけですね
渡部:それぐらいの強い気持ちがなければ務まらない仕事だと思っています。
理想を追いかけながら、目の前の業務に地道に取り組む姿勢

— 今後チームとしてはどのような未来を描いていきたいと考えていますか?
岩佐:
カケハシは、創業から、複数のプロダクトがあり、かつデータの利活用を含めて価値のあるユーザー体験を提供する「コンパウンドスタートアップ」としてのプロダクトポートフォリオを描いています。
今まさに描いていた未来に近づいてきているので、今後はM&Aを含めてプロダクトポートフォリオが広がっていくことを見据え、既存システムと接続し、しなやかな医療体験を提供していくシームレスな連携が求められることになります。
当然システム間においても、一つひとつのデータが、プロダクトの垣根を超えてシームレスにつながっている状態が必要であり、今後さらに重要度が増していくでしょう。
渡部:もう少し手前の話をすると、大規模法人のコーポレート部門の方たちの「この機能はこの地域のエリアマネージャーに使ってほしい」「この人たちにはサービスの参照だけにしておきたい」といった要望に応えることのできるアドミン機能まで昇華して、薬局さまのガバナンスに柔軟に適用できるように拡張したいですね。向こう2年ぐらいで。

— 未来に向けての課題はどんなものがありますか?
渡部:まずは技術ですね。
特に認証・認可や複雑な組織構造の管理は技術的にも高難度です。安全性とユーザビリティの両立が求められますし、単なる機能提供にとどまらないUXとスケーラビリティを意識した設計が必要になってきます。
そのために、チームではPdMとエンジニアが密に連携し、「ただ動くだけ」ではなく「本当に価値のある体験」をつくることを重視しています。また、判断の精度を高めるために、過去の失敗事例や技術的ベストプラクティスをもとに議論する文化を育てているところです。
— やはり高い技術力を持つエンジニアが必要なのでしょうか?
岩佐:もちろん技術力があるに越したことはありません。しかし、単に技術力が高い人を迎え入れるというよりも、カケハシで顕在化・表層化している様々な問題を深堀り、プロダクトとシステムの両面から構造化・抽象化し、ビジネスと技術を接続できる能力があることを重視しています。
私が一緒に働きたいのは「技術は手段である」と理解しつつも、手段をきちんと研ぎ澄ますことを怠らない人。料理人は何本も包丁を持っていますが、それぞれ用途もつくれる料理も違いますよね。その包丁は何のためにあるのか、何を得意とし何を苦手としているのか、その包丁で顧客が満足する料理が提供できるのか。それらを自分の言葉だけで説明できるくらい理解していないと料理がつくれないように、技術をビジネスや顧客価値につなげていくことに関心を持てる方と一緒に働きたいと思っています。
渡部:PdMとしては、日本の医療の未来にワクワクしていて、技術も含めて周りのチームにも関心を持って取り組める方と一緒に働きたいですね。技術要素についてはチームのなかで打席に立ってキャッチアップできるので、未来に向かって守備範囲を広げていけるような人であれば楽しく働けるのではないでしょうか。
あとは、「とにかく複雑なパズルを解きたい」という職人気質の方ですね。医療業界はセキュリティが堅牢で、ガイドラインも徹底していて、技術要素も相対的にレガシーなので、「難しい×難しい」の掛け算なんです。ただ、解くべき課題としてはなかなかの手応えがあると思っているので、「複雑な問題を一緒に解いていきたい」という方にはフィットする気がします。
岩佐:わかります。カケハシの仕事は非機能要件や品質要件が込み入っているものばかりなので、地道に向き合っていくことができる人であれば働きやすいかもしれません。
渡部:理想を追い求めながらも、目の前の課題から逃げない。両方の視点を持っている方であれば嬉しいですね。
本気で医療を進化させようとしている

— お二人が考える仕事のおもしろさについて教えてください
渡部:業界全体の視点とキャリア形成の視点の両方におもしろさがあります。
まずはキャリア形成のお話をすると、先日東証からも発表のあったグロース市場の基準見直しなどを受け、マーケット全体でもMAの流れが加速していくと考えています。そこで、我々のようにある程度資金があって、打席が多く回ってきて、どこよりも先に経験を積めることは今後のキャリアにとってアドバンテージになっていくはずです。
業界全体の話だと、カケハシが掲げる「日本の医療体験を、しなやかに。」に近づいている感覚はあります。先ほどの二要素認証の話もありますが、医療従事者の方からのシームレスな業務体験への期待は、目下のサービスデリバリーにおいても感じるところです。
薬局側のあり方も今後どんどん変わっていって、最近では「調剤外注化」というキーワードで全体の医療リソースを最適化していく検討がなされています。我々としても、必然的に日本の医療業界そのものの進化を見据えながらサービスアーキテクチャを考えることが必要になってきていて、未来を描くこと自体はどの企業でも考えられている部分だとは思いますが、薬局さまの各業務プロセスに貢献できるサービスをそれぞれ持っており、それを更に進化させられる組織のケイパビリティがある、といった部分含め、この世界観の実現に本腰を入れている企業は他にはないという自負があります。
もちろん実現可能性はまだ未確定ですが、次の世代につながる枠組みづくりに貢献できていることは非常に楽しいです。
岩佐:私からは社内向けの仕事のおもしろさについてお話しさせてください。究極的には、社内の他チームも“顧客”なので、定期的に困りごとをヒアリングしたり、課題があったら「では、こういうソリューションはどうですか?」と提案したり、そのままシステムを提供したり……社外だけに限らず、社内に対してもエンジニア自身が関心を持って動いていく姿勢が求められます。
社内向けシステムの提案や開発が意外と大変ではあるのですが、自分が言い出しっぺだからやるしかない(笑)。ラクではありませんが、これはこれで楽しいですよ。

— 社内の各チームとのやり取りに関してはいかがでしょうか?
渡部:私は基本的に非エンジニアのビジネス領域ともコミュニケーションが多いのですが、社内はマチュアな人が多いので、かなりやりやすいですよ。
当然チームによって視点は違うので、私たちの提案するスコープでトレードオフはたくさん発生してしまいます。しかし、「これはこういう枠組みでできますが、ただし、こういう制約があります」みたいなコミュニケーションは、お互いがそれぞれの役割を全うしている証拠ですから健全だと感じます。
たとえばセールスメンバーに対してはお客さまとのコミュニケーション段階まで意識して「それならこういう案内の仕方を一緒にできるとどうですか」と並走するようにしています。セールスメンバーやCSメンバーが腹落ちしてお客さまに説明できる状態まで調整しておけると、その後細かなQAが発生しても自身の判断で進められますからね。
もしかしたら「コミュニケーションコストが高い」と言われるかもしれませんが、各メンバーが腹落ちしていることで、上記のようにそれぞれの状況下でお客さまにとって最適な選択をしているため、結果的に組織全体として推進力が出せると感じています。

岩佐:エンジニアも同様で、たとえば他チームのエンジニアから「このシステム基盤は、そもそもなぜこうなっているのか」と聞かれたときに「もともと入ったときからそうでした」ではなくて、「現在こういう課題があって、こういう背景があります」と説明する必要があります。
わからないことがあればクリアにして、他チームのエンジニアの信頼を培っていく動きが大事になってきます。逆に信頼関係さえあれば、コミュニケーションは取りやすいですよ。
— 最後に、今後チームとして描いていきたい未来について教えてください。
岩佐:今の日本の医療現場には課題が山積しています。求められるプロダクトの形は刻々と変化していくし、最終的には我々の想像とは異なるものが解決するかもしれない。
しかし、どんな課題に対しても答えを出し続けなければならないのがプラットフォームシステムです。サブドメインと言われるようなライセンスやユーザー管理、認証といった課題はもちろん、まずは答えを出せるようなシステムとデータを蓄積させて、運用し続けることが必要です。そして、データの差分を各プロダクトチームやCSの皆さんに配信し、ビジネスに活用できるようにレバレッジをきかせていく。それが、コンパウンドスタートアップとしては大事なところなのではないでしょうか。
一番大事なのはプラットフォームのデータなので、ここ数年できちんと作り切ることが未来のために重要だと捉えています。
渡部:“攻め”と“守り”の要素があるチームなので、今後もバランスをとっていくことが必要になります。“守り”とは、二要素認証の話に代表されるような社内外含めた連携を形にしていくことです。一方、“攻め”とは、共通基盤上で動くデータが患者さまや医療全体に価値を還元できるようになったり、サービス全体での体験が薬局さまにとって圧倒的になめらかになることです。
私達が考えることそのものが、未来の医療を描くことと同義だと思っています。具体的に価値を提供できるレベルにまで落とし込み、形にしていくことが、ますます重要になっていきます。
今までは「各プロダクトを頑張って伸ばすぞ」というフェーズでしたが、これからは「コンパウンドスタートアップとして価値を出していくぞ」というフェーズです。“攻め”と“守り”とをいかに精度高く、価値のある形でつくっていくことが勝負になっていくはずです。
—ありがとうございました!
カケハシのエンジニア採用についてはこちらをご参照ください。
<プロフィール>
渡部桂太(わたなべ・けいた)
新卒でシンクタンクへ入社。ヘルスケアセクションでPjM、ITコンサルタント、リサーチャーなどを務める。その後、社会保障・医療の領域に事業主体として貢献したい想いから、カケハシにカスタマーサクセスとしてジョイン。CS業務プロセス刷新からチームマネジメント経験後にプロダクト開発に移り、患者向け情報プラットフォーム事業の新規サービス立ち上げを経て、現在は「認証・権限管理基盤」と「Musubi AI在庫管理」の両プロダクトのプロダクトリードを兼務している。
岩佐幸翠(いわさ・こうすい)
情報系の大学院修了後、新卒でWeb系のメガベンチャーへ入社。認証基盤の開発チームに配属となる。毎日の暮らしで発達障害に関連するニュースを目にするなかで、「非定型発達とされる方々がより良く生きられる社会にしたい」と感じるようになり、2022年8月にカケハシへ転職。現在は、テックリード兼TPdMとして複数の医療システムを支えるプラットフォームシステムの開発・運用をリードしている。