KAKEHASHI Tech Blog

カケハシのEngineer Teamによるブログです。

タスクの棚卸しをAIにやってもらいたい

こんにちは、カケハシのMusubi基盤開発チームでSREをしているmorityです。
これは、カケハシ Advent Calendar 2025 の10日目の記事です。

はじめに

当時の私は入社3ヶ月目で、既に作成されているチケットの背景や詳細をあまり知らない状態でした。Musubi基盤開発チームではJiraでタスク管理を行っており、エピックやチケットをきちんと起票して管理する文化は根付いていたのですが、差し込み案件なども多く、着手したが止まってしまったり、途中で優先度が変更されたままのエピックやチケットも数多くありました。

そこで今回、AIを活用してある程度機械的にチケットを棚卸しし、継続して判断をサポートするツールを作ってみることにしました。

この記事では、Cursor と NotebookLM を使ったタスクの棚卸しとドキュメント生成の実践例をご紹介します。特に、チームの背景知識が少ない状態でもAIを使ってタスクの優先度判断をサポートする方法や、OKRドラフトの作成プロセスに興味がある方の参考になれば幸いです。

背景

Musubi基盤開発チームでは以下のような課題を抱えていました

  • チケット管理の文化はあるが、実態との乖離: エピックやチケットをきちんと起票する文化は根付いていましたが、差し込み案件などが多く、途中で放置されたエピックやチケットも数多くありました
  • 優先度判断の難しさ: ちょうど大きな案件が落ち着いたタイミングだったこともあり、OKRのようなチームの方向性を示す資料が作成できておらず、今後どのタスクから手を付けるべきかの判断が悩ましい状況でした

そこで、背景や指針となる事前情報が無くても、ある程度期待通りにタスクの優先度をスコアリングし、継続して判断をサポートできる仕組みを作ることにしました。

やったこと

1. 事前準備

まず、AIにタスクを判断してもらうために必要な情報を集めました

  1. 社内資料: 社内の関わりの深いチームが作成したプロダクトに関するロードマップやOKR等の資料
  2. Backlog: JiraのFilter機能を使用して、完了以外のEpic + IssueをすべてCSVファイルにエクスポートしたもの

この2つのデータソースを準備することで、AIに対してビジネス観点とタスクの実態の両方を理解させることができます。

2. Cursorを使用したIssueのスコアリング

次に、事前準備したBacklog の Issue 1件ずつに対して以下の資料を与え、Cursor に優先度スコアリングを実施してもらいました。
(このスコアリング自体も「RICEスコアリングを参考に機械的にスコアリングしたい」と伝えてCursorに作成してもらいました)

優先度スコアリング計算式

# 優先度スコアリング計算式

優先度スコア = (ビジネスインパクト × 0.4) + (緊急性 × 0.3) + (実装容易性 × 0.2) + (リスク × 0.1)

- ビジネスインパクト = (User Impact Score × Users Affected Score × Frequency Score)
- 緊急性 = (Severity Score × Workaround Score)
- 実装容易性 = (10 - Complexity Score)
- リスク = (Abandoned Risk Score)
  
# 各指標の数値化基準

**User Impact Score (1-10)**
{
  "service-down": 10,
  "feature-unavailable": 8,
  "performance": 6,
  "user-experience": 4,
  "internal-process": 2
}

**Users Affected Score**
{
  "all-users": 3.0,
  "majority-users": 2.5,
  "some-users": 2.0,
  "few-users": 1.5,
  "internal-only": 1.0
}

**Frequency Score**
{
  "continuous": 3.0,
  "daily": 2.5,
  "weekly": 2.0,
  "monthly": 1.5,
  "rare": 1.0
}

**Severity Score**
{
  "critical": 10,
  "high": 7,
  "medium": 5,
  "low": 2
}

**Workaround Score**
{
  "no-workaround": 1.5,
  "difficult-workaround": 1.2,
  "easy-workaround": 1.0
}

**Complexity Score**
基本スコア = 3として、以下の条件で加算:
- 新しい依存関係が必要: +2
- データベース変更が必要: +2
- API変更が必要: +1
- インフラ変更が必要: +1
- リサーチが必要: +2
- チーム間調整が必要: +1
- 破壊的変更を含む: +3
  
**Abandoned Risk Score (1-10)**
{
  "data-loss": 10,
  "security-breach": 9,
  "service-degradation": 7,
  "user-complaints": 5,
  "technical-debt": 3,
  "maintenance-burden": 2
}


# 優先度ランク分類

- スコア >= 80: **P0 (Critical)** - 即座に対応
- 70 <= スコア < 80: **P1 (High)** - 今スプリント
- 50 <= スコア < 70: **P2 (Medium)** - 次スプリント
- 30 <= スコア < 50: **P3 (Low)** - バックログ
- スコア < 30: **P4 (Future)** - 将来検討

AI判定支援フロー

Cursorを使った判定フローは以下のようになりました

  1. Issueのタイトル、本文から各指標を自動抽出
  2. スコアリング計算の実行
  3. 類似過去事例とのキャリブレーション
  4. 判定結果と根拠の提示
  5. 人間による最終確認・調整

すべてのIssueに対して優先度スコアリングが完了したら、Epic毎にグルーピングして再び優先度スコアリングを実行します。これにより、個別のIssueだけでなく、Epic単位での優先度も把握できるようになりました。

3. NotebookLMを使用したタスク整理やドキュメント生成

次に、NotebookLM を活用してタスク整理とドキュメント生成のサポートを行います。

  1. データソースの投入: NotebookLM に事前準備した社内資料とBacklog(優先度スコアリングの列を追加した状態)をデータソースとして投入
  2. レポート作成: レポート作成機能を使用し、Musubi基盤開発チームのOKRドラフトを作成

NotebookLMは複数のデータソースを横断的に分析し、チームのOKRドラフトやプロジェクト概要のドラフト作成に非常に便利でした。また、チャットボットのような利用も可能で、「OKRに基づいて優先度の高いEpicを教えて」といった質問にも答えてくれました。
弊社のテックブログでは、他にも NotebookLM の音声解説を活用した事例などもありますので是非合わせてご覧ください!

得られた成果

この取り組みを通じて、以下のような成果が得られました

1. 背景知識がなくてもスコアリングが可能に

背景や指針となる事前情報が無くても、 Cursor がある程度期待通りにタスクの優先度をスコアリングしてくれました。起票時の詳細な背景を知らない私でも、AIのサポートにより効率的にタスクの棚卸しができました。
これは、日頃からチケットに概要から進捗や成果物まで各メンバーがきちんと記載をする文化が根付いており、もともと判断に十分な材料があったことが大きいと感じます。

2. NotebookLMのドキュメント作成能力や対話的な情報取得

NotebookLM がチームOKRのドラフトなどのドキュメント作成に非常に便利でした。特に、複数のデータソースを統合して、一貫性のあるドキュメントやマインドマップを生成できる点が優れています。
今後は大きな案件単位でプロジェクト概要やロードマップのドラフト作成にも活用できそうです。
また、チャットボットのような利用が可能で、「OKRに基づいて優先度の高いEpicを教えて」といった質問に対して、データソースを元に的確な回答を得られました。

今後の課題

今回の取り組みを通じて、以下のような課題や改善点も見えてきました

1. ワークフローの順序の最適化

今回は「優先度スコアリング → OKR作成」の順番で整理を進めましたが、先にOKRを作成してデータソースにすることで、ビジネス観点を事前知識に含んで優先度スコアリングができるのではないかと考えています。
また、スコアリングにはプロダクトや技術的な知識を要する基準も用意していましたが、これらを正確にスコアリングするためには情報が不足していることもわかりました。
今後はJiraチケットに記載すべき内容の粒度に関するガイドラインを作成したり、事前にコードベースに基づいた修正方針を追記するなど、AIが技術調査やスコアリングしやすいチケットの書き方を標準化することで、さらに効率的なタスク管理を可能にしたいと考えています。

2. AI活用領域の拡大

将来的には、バックログのリファインメント、次スプリント計画など、AIに任せられる領域を広げていきたいと考えています。今回の取り組みはその第一歩として、今後の可能性を感じられるものでした。

おわりに

今回は、 Cursor と NotebookLM を活用してJiraタスクの棚卸しとOKRドラフトの作成を行った取り組みについてご紹介しました。
背景知識が少ない状態でも、AIを活用することでタスクの優先度判断をサポートし、効率的にチームのタスク管理を改善できることが分かりました。
カケハシでは、情報整理やコーディング支援に Cursor や Claude Code、Devin、NotebookLM を活用したり、Slack や Dify を利用したノーコードなワークフローの活用など、日々の業務の多くの場面でAI利活用が進んでいます。

カケハシではこのような知見を一緒に増やしていける仲間を募集しています!