KAKEHASHI Tech Blog

カケハシのEngineer Teamによるブログです。

目標管理と評価制度の考え方

本エントリはカケハシ Advent Calendar 2023 の 11日目の記事です。

今年はPart2もあるのでぜひそちらもご覧ください!

カケハシのVP of Engineeringの湯前(@yunon_phys)です。皆さん、目標設定と評価は順調ですか?私はこれまで何年にも渡って、様々なメンバーの目標設定や評価をしてきました。残念ながら、こうすれば良い目標設定や評価が出来る!という銀の弾丸は無さそうです。でも、こう考えたら目標設定はやりやすいかも、こうすると評価はより納得感のあるものになるかも、というのはあります。

そこで今回は制度を施行・運用していく立場の人間として、目標管理と評価制度の考え方について、私の意見を述べていきます。

目標管理

目標はそもそも変わるものである

みなさんこんなことありませんか?


やる気満々であんなことやこんなことを色々考えて、壮大な目標を期初にがんばって立てて、マネージャーともなんとか合意がとれた。でも、期が終わって振り返ってみると、あまりに達成出来ていなくて、誰がこんな目標やるって言ったんだーとなってしまう。

でも、ふと考える。

そもそもこんなに忙しかったのに、立てた目標をやる時間なんてあったのだろうか?

目の前にやらなきゃいけないことがたくさんあったのに、それを放置してでも目標達成のために動かなきゃいけないってことなのか?確かに期初に立てた目標は達成できなかったけれど、自分はがんばったんだ!!


こういった会話を、多分8割ぐらい組織の中でやられているんじゃないかなーと想像してます。マネージャーの自分としては、「あーそうなんだ、出来なかったんですねー」ぐらいの軽い感覚ですが、目標設定した側だと罪悪感を感じちゃって、気まずい空気が流れちゃいます。

なんでこんな気まずいことが毎回起こるのかというと、目標設定と評価制度の関係性が近すぎることに起きている問題のような気がしています。というのは、目標未達が評価下落につながるようになっていると、ネガティブな話になってしまうのかなと。

でも、本来的にこれはおかしい話で、突発的にやらなきゃいけないことに柔軟に対処したことってむしろ評価されることなのではないかなと思います。少なくともカケハシではバリューに「変幻自在」という言葉があるように、役割に固執せずに動くことは会社として期待されています。

よって、目標設定はそのときに持ち合わせた情報で達成した方が良さそうなゴールの設定をするものであり、別の情報が集まってきたり、状況が変わったら当然変わるものだよね、ぐらいの立ち位置にするのが妥当だと考えます。

目標管理は非連続な成長のため

では、なぜそんなコロコロ変わるゴールのために、全社員が時間を割いて目標設定をするのでしょうか。それは目標管理が非連続な成長のために存在しているからです。

カケハシでは様々な目的意識を持って働いている方が多いので、おそらく目標設定をしなくても多分今よりは良い方向には向かうのだと思います。ただ、それは各個人の意思で実行する連続的な成長にしかならず、数年経って段違いなレベルの成長(非連続な成長)にはつながらないのではと想像します。

期待された企業価値よりも更に上を行く成果をスタートアップとして発揮していくために、組織レベル・個人レベルの両方での非連続な成長を遂げる一つのやり方として目標管理が必要なのだと思っています。

ここで重要なのは、非連続な成長を期待しているということは不確実性の高い挑戦を行うことでもあり、つまり、必ずしもうまくいくかどうかはわからないということです。もちろん、チャレンジングすぎて絶対到達できないと思えてしまうような目標だとやる気を失ってしまうので、良い塩梅の目標設定が大事になります。そして、うまくいった場合は再現性を今後どう作るか、うまくいかなかった場合はどうやったら状況を改善できるかを考えることまでセットで目標を再設定しながら取り組んでいきます。

目標管理されなくてもやることは目標に入れない

目標として管理されなくてもやるような定常業務や機能追加開発を、目標に入れるべきか迷う場面はあるのではないでしょうか。私が目標設定を見る立場としては、そういった業務に関しては目標に入れないのが良いと思っています。目標管理はあくまで非連続な成長のためにやるという前提から言うと、プロジェクトマネジメント的に進む業務はそちらで管理されている以上、わざわざ目標管理の制度に乗せる必要はありません

でもそういった定常業務でいっぱいいっぱいなのだから、そもそもその他の目標設定なんて出来ないよ、という声も上がることはあります。そういうときは実は変わるチャンスだと捉えていて、その方がやらなきゃいけないと思っていることのバイアスを解きほぐしていくようなコミュニケーションが大事になってきます。例えば、今の定常業務を自動化する仕組みを作れないか、インフラコストを他に減らす仕組みを作れないか、他の人も触れるように業務の簡素化を出来ないのか、などといったコメントをしていきます。こうやって一見やることでいっぱいの方も、バイアスをうまく排除するコミュニケーションをすることで、その方にとって非連続な成長を実現出来るのではと考えています。

評価制度

できたことを見る

目標設定では、「変わるものなんだ」「うまくいくかどうかはわからない目標を立てるんだ」「非連続な成長を目指すんだ」という話をしてきました。では、評価はどうするのかでいうと、"できたことを見る" です。

いろんな過程によって出来たこと、出来なかったことってあると思います。でも、やったことについては全力で向き合ったものなので、出来なかったことを見てもしょうがないと思っています。むしろ、出来たことがあるということは達成出来るかもわからない、非連続な成長を遂げられたということでもあるので、そちらを多いに称賛したいところです。

従って、評価面談で目標設定のときにこれを立てていましたが・・・のようなコミュニケーションは不要です。目標設定のときに立てたことをやれていないときは、普段の1on1で話せていれば良いですが、逆に頻度が多いと話すタイミングを失ってしまうというパターンが多い気がします。そういうときは、月1回の頻度で目標を見直す場を1on1とは別に設けてみるというのも良いです。こうやって予め目標をメンテ出来ていれば、堂々と評価面談に望めるようになります。

思いつく限りの成果・やったことを全部出す

メンバーからすると評価者に普段やっていることを見てもらえているのだから、と評価者へのアウトプットの開示が十分でないケースがあります。しかし、実際に評価者の立場からすると、全部見れていないというのが実情です。評価者は最大限、プロセスや成果について理解するように努めると思いますが、それは評価者の努力次第というファジーな要素です。

というわけで、メンバーには評価面談には成果・やったことを全部出すというのをお願いしています。それらの成果に対して、現在の評価ラダーと照らし合わせて、評価をします。やったことの中には、まだどんな結果につながるかわからない、というものもあるかもしれません。ただ、そのやったことに対してのプロセスを評価する場合もあるので、なぜやったのか・どんな成果につながりそうかの補足説明とセットでとりあえず出すというのが大事です。

自己評価は自分が納得できるもので

評価面談時に自己評価を出すパターンがあるかと思います。カケハシも自己評価を出すようにしています。過去の会社で、自分で出した評価は謙遜して出したのだが、その評価と同じ評価を実際にされて不満がある、というケースを何回か見たことがあります。しかし、これはお互いにとって不幸な結果につながるので、自分が納得できる評価を提示するというのを私はメンバーにお願いしています。

納得できる評価の提示は、自己評価に書かれていることをそのまま評価するような楽をするためではありません。評価者とメンバーの評価ギャップを最大限埋めるための努力にどれだけ工数をかけるかが変わってくるためです。

例えば、評価者側がやったことをB評価だと思ったとします。しかし、メンバー側がA評価と提示してきたのなら、どの点にギャップがあるかを最大限わかろうと努力します。それによってA評価になる場合もあるし、B評価の理由を納得いくまで話すこともありえます。

もしそういうギャップのあるような提示をしたとき、

「この人、自分をA評価にするなんて自己評価甘いんじゃないの?」

と思う方もいるかもしれませんが、私はそういうことは全く思わないということを社内で公言しています。

上の例では評価者が出す評価が低いケースを上げましたが、逆に評価者が出す評価が高いケースもありえます。現在の評価ラダーと照らし合わせて、高い成果を上げていると感じたら、高い評価をもちろんつけます。

評価をする側からすると、高い成果を出すメンバーが多いのは組織にとってプラスでしかありません。そして、そういった素晴らしい成果を出す方に報いるのはマネージャーとして当然の義務だと思っています。このように、マネージャーとメンバーの間で、お互いがが正しい評価のために最大限尽くすという協力関係を築くことが大事だと考えています。

目標管理と評価制度は表裏一体

目標管理は組織の非連続な成長のためにやるので、不確実性が高いものだからうまくいくかどうかはわからないものであることを述べました。一方、評価制度は出来たことを見るから、お互い思っていることをそのままぶつけるようにしようと述べました。

これらはどちらか一方だけの考え方を導入したからといってうまくいくのではなく、概念のコンシステンシーを保つのが重要だと思っています。不確実性の高い目標を考えて、目標の達成度合いで評価をするなんてことをやってしまったら、みんなやる気が無くなってしまいます。組織も人もより成長出来るよう、良い目標設定と評価が出来たら良いなと思います。