こんにちは、Musubi開発チームで開発ディレクターを担当している門垣です。
この記事はカケハシアドベントカレンダー2021の11日目の記事になります。
カケハシではコロナ前からリモートワーク環境が整っており、私の所属するMusubi開発チームは全員がフルリモート環境で働いています。長野県や三重県といった遠隔地のメンバーも所属しているため、出社日も設けておりません。
本日は「フルリモートワークのチームがオンライン雑談を6ヶ月続けてみて感じたこと」を共有したいと思います。
- フルリモートの会社に転職したいけど少し不安がある
- 今のリモートワーク環境をもっと楽しくしたい
と考えている方の参考になると嬉しいです。
オンライン雑談を始めた3つの理由
まず最初に、なぜ私たちのチームがオンライン雑談を始めたのか、その理由を紹介します。 同じような状況のチームや、共感いただける方もいるのではないでしょうか。
理由① 「仕事の顔」と「普段の顔」のギャップがもったいない
私は2021年4月にカケハシへ入社しました。 フルリモートでの入社となり、チームメンバーとの会話はzoomでのオンラインミーティングが中心でした。 オンラインミーティングでは会議の目的に応じた会話が中心のため、入社してすぐには会話に入りづらい印象を持ちました。
そうした中、メンターの勧めもあり、チームメンバー全員と1on1で話をすることにしました。 1on1で1人1人と話をしての最初の感想は、
「みんなすごく良い人!」
slack上でのコミュニケーションやオンラインミーティングでの発言とは印象が違いました。 私はこのギャップがもったいないと思いました。
皆さんも「仕事の顔」と「普段の顔」があるのではないでしょうか。 オフィスなら見せている「普段の顔」もフルリモートだとなかなか見せる機会がありません。
この機会を創りたいと思ったのが最初の理由です。
理由② これからチームメンバーが増える予定があった
私たちが担当するMusubiはSaaSプロダクトとして次のフェーズへと向かう段階にいます。 そのロードマップ実現の前提としてチームメンバーの増員計画がありました。
仲間が増えることは嬉しいことです。 一方、同じ時間を過ごしていても、人数が増えると1人1人と会話をする時間は物理的に減少してしまいます。 その結果、新しい人が増えるたびにチーム内の人間関係が希薄になってしまう可能性があります。
開発ディレクターとして感じたのは、新しく来た人が馴染みやすい環境を準備する必要性が高いということでした。 これがオンライン雑談を始めようと思った2つ目の理由です。
理由③ 元から雑談の仕組みはあったけど物足りなかった
冒頭にも書きましたがカケハシはコロナ前からリモートワーク環境が整っていました。 私が入社した2021年4月には入社の手続きから入社後のオリエンテーションまで、オンライン入社向けに非常に整備されていて驚きました。
そんなカケハシでは、当然ながらオンライン雑談の仕組みは元から存在していました。 すぐに思いつくものだけでも、以下のようなものがあります。 チーム内での雑談だけではなく、チームを跨いだ雑談の仕組みもあります。
[オンライン雑談の例] - オンラインウェルカムランチ - 1on1 - slackの分報チャネル - slackの趣味チャネル - slackの雑談チャネル - コミュニケーション関連の費用補助制度も多数アリ - etc..
それでもチーム内を見るとコミュニケーションに物足りなさを感じました。 雑談を効果的に行うには頻度と即時性、それと全員が話せるかどうかが重要です。 既存の雑談の仕組みでは、これらを満たすチーム全員参加での雑談の場が不足していました。
オンライン雑談の期待効果
雑談にはどのような効果が期待できるでしょうか。 業務時間を費やしてまで実施する価値があるのか、懸念して実施に踏み切れない職場もあるかもしれません。
私も実施するからには期待効果を明確にしようと思い、関連する情報を調べました。 いくつか紹介するので参考にしてください。
Googleの研究結果が示した重要性
結論から言うと、雑談の期待効果はチームの相互理解です。 相互理解ができていると、普段のコミュニケーションも円滑に行えるようになり、生産性の高いチームになると言われています。
Googleの「効果的なチームを可能とする条件は何か」を研究した結果においても、「心理的安全性」と「相互信頼」が特に重要な因子として上位2つに挙げられています。
雑談で仲良しチームになることが目的ではありません。 雑談によって「相互理解」を深めていき、それを土台として「心理的安全性」と「相互信頼」へと発展していくことが必要です。
心理学から見る雑談の期待効果
Googleの研究結果を見ても「相互理解」の重要性はご理解いただけたかと思います。 ここでは、「相互理解」を醸成するのに雑談が有効なのかどうかを心理学の観点で考えたいと思います。
単純接触効果(ザイオンス効果)というものがあります。 初めのうちは興味がなくても、何度も見たり聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくるという心理現象です。 オンライン雑談でも繰り返しているうちに、その人のことが気になるようになり、もっとその人のことを知ろうという気持ちが生じてきます。この知ろうという気持ちが「相互理解」に繋がります。
また、臨床心理学の用語にラポールという信頼関係を示す言葉があります。 このラポール(信頼関係)を形成するために必要なステップとして、[傾聴する] --> [共感する] --> [ラポール形成する]というステップがあります。 相手の話にしっかりと耳を傾け、話に対してリアクションをすることが重要です。そうすることで、話している側も存在承認を感じることができ、信頼関係が形成されていくのです。 雑談にもGoogleの研究結果にあった「相互信頼」の効果が期待できそうです。
オンライン雑談の実施方法
実は私のチームでは元からオンライン雑談を実施する習慣がありました。 業務の進捗共有の場として夕会を実施しており、進捗共有が終わった残り時間に雑談タイムを設けていました。
しかしながら、「今から雑談タイムです」と言われてもお見合いになってしまいます。 特にフルリモートワークだと共通の話題や、視覚的情報も少ないため、雑談が上手く進められませんでした。
オンライン雑談には何か工夫が必要そうです。 実際に私たちのチームが行った工夫をご紹介します。
Good & New のフレームワークをオンライン雑談に適用
Good&New(グッドアンドニュー)とは24時間以内にあった「良かったこと(Good)」や「新しい発見(New)」をシェアする取り組みです。 アメリカの教育学者ピーター・クライン氏が考案したもので、チームビルディングやコミュニケーション活性化などで実施されています。
Good&Newを取り入れる主な目的
- チーム全員が発言機会を持つことが重要と考え、発言しやすいGood&Newを取り入れる
- 「良かったこと(Good)」や「新しい発見(New)」にはその人の価値観や人柄が現れ、チーム内での相互理解が深まる
- 副産物として「良かったこと(Good)」「新しい発見(New)」を考える習慣を持つことでポジティブな気持ちになる
Good&Newの実施方法(通常版)
- 1人ずつ順番に「良かったこと」や「新しい発見」を1分程度で話す
- 話しが終わったら全員で拍手する
- 次の人にバトンパスする
- 全員が話し終わるまで繰り返す
Good&Newの実施方法(オンライン向けアレンジ)
通常版でも良いのですが、「1分程度話す」というのが少し義務感や抵抗感があったりします。 また、1人ずつ話して終わりだと交流の要素が少なくなります。 もう少し緩くGood&Newをオンラインで行うために実施方法を少しアレンジします。
- 事前にホワイトボードへ「良かったこと」や「新しい発見」をカード投稿する
- チームで集まりホワイトボードに投稿されたカード内容を順番に見ていく
- カード内容について投稿した本人や他の人が雑談を繰り広げる
なお、私のチームではホワイトボードとしてGoogle Jamboardを活用しています。
チームに声かけして実際にやってみた
早速チームにオンライン雑談の実施を夕会(standup)で提案しました。 提案後にホワイトボード(Google Jamboard)を展開したメッセージがこちら。 入社2ヶ月目で少し初々しさがあります。
みなさん快諾👍×8 翌日の雑談が楽しみです。
▼第1回オンライン雑談のホワイトボード
記念すべき第1回のホワイトボード(Google Jamboard)です。 チームの様子が少し見え隠れしますね。 6ヶ月経過しましたが、このボードを見ると当時話したことを思い出します。
▼料理画像が多い回のホワイトボード
料理好きのメンバーが多いチームということが分かってからは、美味しそうな料理の画像が共有されることが増えました。 この場でレシピを聞いて、「実際に作ったよ〜」という報告がされることもあります。
また、新しく来たメンバーとのオンラインウェルカムランチで「最近キャンプを始めた」と自己紹介していたから、オンライン雑談でキャンプ場の紹介をするメンバーがいました。 こうして、毎日の会話で「受け入れる」「歓迎する」というシーンが見られます。
これまでに比べて、お互いの人柄も理解できるようになり、オンライン雑談を実施して良かったと思います。 今後もオンライン雑談を続けていきたいと思いますが、この6ヶ月でわかったことを振り返り、今後の施策を考えてみました。
オンライン雑談を6ヶ月続けてわかったこと
良かったこと
今までは気づく機会の少なかった人柄に関する相互理解が進みました。 趣味や日々の習慣を知る機会になったのはもちろん、そのエピソードを話すときの内容から価値観や人柄がにじみ出てきます。 これは通常の業務によるコミュニケーションでは気づきにくい部分でした。
また、新しく入社したメンバーがみんなの前で発言する機会が増えました。 通常の業務に関しては、入社直後はキャッチアップしている段階ということもあり、発言のハードルが少し高いと思います。 Good&Newに基づくオンライン雑談であれば、誰でも参加しやすいので発言のハードルが低くなります。
通常業務でも変化を感じます。一例について触れたいと思います。 私たちはチーム運営をスクラムの考え方をベースにしています。 スクラムでは定期的な「ふりかえり」をチームで行いますが、そこでの発言やアイディア出しが活発になっているように感じています。
改善すべきこと
まだ発言する人にばらつきがあります。 オンライン雑談に義務感を生じさせたくなかったため、ホワイトボード(Google Jamboard)への投稿は任意にしています。 そのため、発言の頻度にばらつきが出るのは仕方ありません。 一方で全員参加が重要だと考えているため、全員参加しやすい工夫がもう少し必要そうです。
また、相互理解は進んだものの、業務で必要な相互理解としては不十分なところが残ります。 例えば、チームメンバーの「得意なこと」、「苦手なこと」、「仕事への価値観」といった部分は相互理解していると実際の業務で生きてきます。 Good&Newに基づいた雑談ではそういった話はあまり出てこないため、別の方法が必要と感じています。
オンライン雑談を更に効果的にするための施策
今のオンライン雑談を改善する
現在のGood&Newでは「モノ、コト」が対象となることが多いです。 また、投稿した人を中心として会話を展開しています。 今後は、「考え方、価値観」といったテーマに対して全員で話し合うことを試したいと考えています。 これによって、全員参加と相互理解を深めることを両立できるのではないかと思います。
また、オンライン雑談の実施時間が現在は夕会となっています。 雑談を先に行うことで、一日のコミュニケーションがより円滑になるという報告もあるため、朝会としてオンライン雑談から業務をスタートすることを試したいと思います。
相互理解のレベルを引き上げる
「改善すべきこと」でも述べましたが、チームメンバーの「得意なこと」、「苦手なこと」、「仕事への価値観」といった部分の相互理解はまだ不十分だと感じています。 こういった仕事や働き方に直結する部分の相互理解があると、フルリモートワーク環境でもお互いの状況に配慮した動きがしやすくなりそうです。
アジャイルサムライの著者「Jonathan Rasmusson氏」が紹介しているチームビルディングの手法にドラッカー風エクササイズがあります。 チーム全員で4つの質問に対する答えを共有することで、相互理解の促進と期待の擦り合わせをするのに効果があると言われています。 私の所属するチームでも実施する計画を立てています。
▼ドラッカー風エクササイズ4つの質問 - 自分は何が得意なのか? - 自分はどういうふうに仕事をするか? - 自分が大切に思う価値は何か? - チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
少し難しい質問もありますが、オンライン雑談をやっておくとこれらを実施するハードルも下がりそうです。
最後に
私たちの提供する調剤薬局向けプロダクト「Musubi」は薬剤師と患者様の相互理解を支援するプロダクトです。 日本が直面している超高齢社会においては、慢性期医療が中心となっています。 そこでは患者中心の医療が求められ、患者様を中心としたより一層の相互理解が必要です。
私たちは、これらの課題に立ち向かい「日本の医療体験を、しなやかに。」を実現する仲間を探しています。
ご興味のある方はぜひこちらをご覧ください。