KAKEHASHI Tech Blog

カケハシのEngineer Teamによるブログです。

Amazon Working Backwardsを実施したら顧客に対する解像度が爆上がりしたよ!

カケハシでエンジニアリングマネージャーを担当している小田中です。

AWSの皆様にご協力いただき、社内でAmazon Working Backwardsを開催しました。こちらの体験がとても、と〜ってもよかったのでみなさんにご紹介したく、イベントレポートを書くことにしました。

Amazon Working Backwardsって?

AWSで新しいサービスや取り組みを実施する際に必ず実施されるプロセスが「Working Backwards」です。 「お客様は誰ですか?」から始まる5つの質問を通じて、企業が作りたいものではなく、顧客の目線から顧客体験を徹底的に考えていくことで、自分たちがつくるべきもの、解決するべき顧客の課題を明確にしていくワークショップです。書籍にもなっているので、ご存知の方も多いかもしれません。

アマゾンの最強の働き方ーーWorking Backwards

私自身は、AWS CTO Night & Day 2023に参加した際にこちらのワークショップを体験することができました。 その際に自分自身の解像度が圧倒的に高まった実感があったこともあり、カケハシでもやってみたいなー、とぼんやり考えていました。 そこでAI在庫管理チームのProduct LeadであるJさんに相談したところ、「チームの顧客解像度は上げていきたいので、やってみたい」というグッドリアクションが返ってきたので、実際に実施していく運びとなりました。

Working Backwardsを実施するチーム

今回は、「Musubi AI在庫管理」という、AIによる来客予測で在庫管理の課題を解決する、発注・在庫管理のアシスタントを開発しているチームで実施しました。

プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、エンジニア、デザイナーなどさまざまな職種のメンバーで2つの混成チームをつくり、それぞれプレスリリースまで作成しました。

Working Backwardsの事前準備

実際に実施していくために行った事前準備を紹介します。

まずはタイムテーブルの作成。 Working Backwardsについてはさまざまな実施形態があるのですが、今回は2日間に分けて実施するという形をとりました。 実際に利用したタイムテーブルはこちらです。

Day1

Agenda Speaker Duration
Opening 小田中 10分
Amazon「Working Backwards 逆方向に思考する」のご紹介 AWS 15分
顧客・ステークホルダーを理解する Jさん 30分
課題の整理・アイデアの創出 全員 60分
Check-in/PR作成に向けたHeads up 全員 5分
課題整理の継続・PRドラフト 全員 45分
Wrap up & next steps 小田中 10分

Day2

Agenda Speaker Duration
発表準備 全員 60分
発表・Q&A 全員 50分
講評・今後の展開に向けたディスカッション 全員 60分

また、カケハシはフルリモート環境となっていることもあり、今回のWorking Backwardsはオンライン開催を前提として準備を進めていきました。 会場として使用するZoom、そして作業スペースとしてのFigjamをあらかじめ用意しておきました。 このとき、AWSの方がJouney MapやValue chain analysisのテンプレートを共有してくださったので、スムーズにワークを進めるために有効活用させていただきました。感謝!

Working Backwardsの実施

いよいよWorking Backwards開始!

いよいよWorking Backwardsを実施する日がやってきました。 AWSの方から概要について解説していただき、JさんからはMusubi AI在庫管理の顧客、ステークホルダーについてインプットしてもらいました。 個人的には、この時点で「やってよかったな」と思うくらいには良いインプットの機会になっていました。在庫管理、奥が深い。

顧客の課題と向き合う

インプットが終わったあとは、いよいよ課題の整理とアイデアの創出。Working Backwardsのコア部分です。 ここからは2つのチームに分かれて取り組んでいきました。 私はグループBのブレイクアウトルームに参加しました。AI在庫管理のチームのメンバーではないので傍観しようと思っていたのですが、「せっかくだから参加してくださいよ」と言っていただき、気がつけばガッツリと参加することになっていました。 顔写真

グループBでは、まずJourney Mapを作成することから始めました。 薬局における一日の業務の中で薬剤師さんがどう動くか、どんな体験があり何を考えているのか、困りごとは何か、そこに対して存在する機会は何かを薬局経験のある薬剤師メンバーを中心に洗い出していきました。 このとき、多くのメンバーから「これは大変だわ…」「薬剤師さんって本当に忙しいね…」といった声が上がっていたのが印象的でした。Journey Map作成を通して顧客への没入度が高まっていったようです。

Jouney Map

アイデアをプレスリリースにまとめる

課題を洗い出し、それらを解決する新しいサービス・機能のアイデア出しをしていきました。 どちらのチームもDay1ではまとまりきらず、Day2に持ち越しとなったのですが、どちらのチームもDay1が終わるなり「Day2までに1回集まって課題を整理したい」と提案しており、Working Backwardsを持ち込んできた人間としては大変に胸アツな展開となっていました!

そういった自主的なワークを挟み、それぞれのチームでプレスリリースをまとめ、いよいよ発表する時間が訪れます。

Product Leadが見せた本気

プレスリリースに対しては、Product LeadのJさんを中心にQ&Aが行われました。 Jさんからはかなり突っ込んだ質問やツッコミが飛んできており、Product Leadとして、実際にリリースする可能性があるかもしれないアイデアの提案として本気で向き合っていることがひしひしと伝わってきました。 あるチームに対して「そうそう、こういうのやりたかったんですよね!」と嬉しそうにフィードバックするJさんの笑顔がとても印象的でした。

BtoBのVertical SaaSは、その性質上プロダクトを自分ごととして捉えることが難しい場合があります。実際、薬局における発注・在庫管理について、日頃ソフトウェアエンジニアがリアリティをもって業務をイメージすることは簡単ではありません。それが、数時間のワークショップを通して、Product Leadが本気で向き合いフィードバックしたくなるようなプレスリリースをつくるところにまでチームを成長させる。Working Backwardsの威力をあらためて感じた一幕でした。

ご参加いただいたAWSの方々からもコメントを頂きましたので、紹介します。うれしいですね!

「今回は、Working Backwards Workshopを、短縮版でオンラインで実施するということで、時間が足りなかったり、盛り上がらなかったらどうしようかと、始まる前までは実はちょっと心配しておりました。ところが、始まってみたら、AI在庫チームの皆様は、もともとWorking Backwardsをご存じだったのではないかと思うぐらい、秒でコンセプトを理解され、もしかして皆さん前職デザイナーだったのではないかと思うぐらい爆速でCustomer Journey Mapを作り上げ、オンラインだというのを忘れるぐらい和気あいあいとPR作成に取り組まれており、Working Backwardsを短期間に自分事化してしまう吸収力や圧倒的な当事者意識、ファシリテーション力、想像力、チームワークに、AWSメンバーも大いに刺激を受けました。急成長しているKAKEHASHIさんのカルチャーや社員の皆様をより間近で理解することで、AWSから見た顧客解像度も爆上がりし、ますますご支援を加速・強化して行きたい!と気合が入る素晴らしいワークショップでした。貴重な機会を有難うございました!」

Working Backwardsを終えて

AI在庫管理チームで実施したWorking Backwardsについて、駆け足で紹介してきました。 やってみてわかったのは、顧客解像度を上げるために本ワークショップが有効であるということです。また、異なるロールのメンバーによる混成チームで実施したことで、相互理解も深まったように思います。

私がはじめてWorking Backwardsを実施したのは前職時代。BtoCのプロダクトに対してでした。今回、BtoBのVertical SaaSに対して実施してみてわかったのは、自分自身が顧客になることが難しい、よって顧客目線の獲得が容易ではないBtoBビジネスに身をおいていればこそ、Working Backwardsはぜひとも実施したいワークショップだということでした。顧客に対する解像度がなかなか上がらないと悩んでいる方は、ぜひAWSの方に相談して、実施してみることをオススメします。

今回獲得した顧客目線を武器として、これからも日本の医療体験をしなやかにするべく、日々精進していきたいと思います。