KAKEHASHI Tech Blog

カケハシのEngineer Teamによるブログです。

開発ブログ開設:カケハシの開発における6つのvalueとは

CTOの海老原です。

これまでカケハシでは、情報発信するためのメディアとしてコーポレートブログは運用していましたが、いわゆる技術ブログ・開発ブログのようなものについては創業五年経った今に至るまでやってきませんでした。それはひとえに「顧客に価値を届けることに集中したい」という取捨選択の一つではありましたが、一方でその価値の源泉であるところの具体のサービス開発に携わるソフトウェアエンジニアの方、「名前は聞いたことがあるがどんな会社なんだろう?」と興味を持ってくれた方に知って頂く機会を提供しきれていなかったということでもあります。

また、ソフトウェアエンジニアにとって事業貢献に伴う達成感ややりがいは無論重要ですが、それと同じかそれ以上に自身の技術力向上や未知の技術に触れる知的好奇心の充足といった事柄が組織としてサポートされているかどうかも大切なポイントだと思います。

これらを踏まえ、改めて開発ブログを立ち上げて硬軟織り交ぜながら様々な技術的な情報の発信を行っていきます。決意表明を長々としても読んで頂く方に対するgiveが無いので最初の投稿として何を書こうか…と悩みましたが、社内でvalueに関する言及を行う機会が多いため、今回は特にソフトウェアエンジニアリングにおけるカケハシのvalueの発露とはどういうことか?ということに簡単に触れてみようと思います。

そもそも

valueの策定には私自身積極的に関わったこともあり、ソフトウェアエンジニアリングやプロダクトマネジメントの観点でこういうものを入れたいということを推した内容が多く自分としても思い入れの強いものになっていますし、全体として比較的に開発文化の影響が強く出ているとも思います。

その上で、最近改めて眺めた時によく感じることは、6つあるが究極言っていることは一つで、「(難しくて大きな社会的課題を解決するために)いかにチームとしてレバレッジがかかるやり方でやっていくか」ということを様々な側面から言っているのではないかということです。そのような観点も踏まえつつ、6つのvalueについて書いてみようと思います。

高潔

自分に矢印を向け、易きに流れず、言行一致で信念をつらぬこう

よく社外の方からは「変わっている」と言われ、自身一番思い入れのあるvalueでもあります。基本的には各々の専門性や視点から理想とするあるべき姿から目を背けず、できうる限り最高の仕事を行うことを自身に課す、自分に嘘をつかないということだと考えています。

ソフトウェアエンジニアリングで言うなら、顧客に提供する価値を基盤として考えた時に求められる堅牢性であったりユーザー体験上の品質、あるいは情報セキュリティなど維持するために限られたリソースの中で最大限の設計・開発品質を提供すること、それ自体はある意味当たり前のことではありますが、少ない開発工数の中で高速なアウトプットを求められるスタートアップの環境の中でバランス感覚を持ってこの思考を維持し続けるのは非常に難しいことでもあると思います。

どちらかというと一人ひとりの内面の話であり、ややもすれば自己完結的な側面もある概念ですが、良きチームとして大きな目標に向かっていくにあたり単なる仲良しこよしに堕さないためにそれぞれが目指すところの高さを求めることは重要な意義があると思います。

価値貢献

チームの成果にどんな価値で貢献するか? その価値が最大化されるやり方を自ら選びとろう

「貢献」という言葉にとてもカケハシらしい側面が感じられるvalueです。目に見えやすい「成果」だけでなく、チームあるいは企業全体で顧客にデリバリーする「価値」に対してどのような形であれ全ての人が「貢献」していて、その中には地味で目立ちにくいこともあります。そのような分かりにくい「貢献」にも目を向けること、またそれぞれが率先して行っていくことを期待します。

ソフトウェアエンジニアリングにおいては、開発の進捗は勿論重要ですが、中長期で考えた時の効率につながるdeveloper experienceの向上や技術的負債の返済計画、ドキュメントの整備のようなことを例えばSREのチームに任せきりになるのではなく、各スクラムチームの中で主体的に行っていくことは所謂フィーチャーチームのあり方や、DevOpsの進め方として非常に重要だと考えています。

カタチにする

議論や批評に終わることなく、実現・実行・決断を。困難上等、やり抜くことを当たり前に

「とりあえずやってみよう」という意味で捉えられることも多いですが、どちらかというと当事者意識や高速な仮説検証を意識したvalueです。レビュアーや評論家的スタンス、ふわっとした提案で終わることなく、課題のありかを特定しそれに対するアプローチを最低限明確にした上でやった結果どうなるか、というところまでセットで高速でやっていきましょうということです。

ある意味、開発者にとって「高潔」はこだわりを追求していくという意味で追い求めやすいところもありますが場合によっては独り善がりや自己満足に陥りやすい部分もあると言えます。そのような状態について対になる概念として、現実の開発状況から乖離した複雑で高踏的な設計議論はほどほどにして価値のデリバリーに対して最小最適な形でまとめあげる、それを実現していく姿勢も重視したいです。

無知の知

独りの限界を素直に認めることで、新たに学び、助けを求める強さを持とう

書籍で言ってしまえば「Team Geek」で述べられているHRTの姿勢、また同時にプロダクトマネジメントの文脈で言っても「動かして、顧客にぶつけてみて初めて求められているものが分かる」という探索的な姿勢の源泉としてこれも思い入れのあるvalueです。自分自身が持つ知見、見える範囲の限界やそれに基づく偏りを自覚し、新しいものの見方や方法論を貪欲に吸収すること、そのために必要なオープンマインドな姿勢を重視します。

一人ひとりが自身の技術力や知見に自負を持つことは必要ですが、とはいえ一人の人間が持っているものやそれで解決できることはたかが知れていて、またそれぞれに秀でている部分もばらばらでありその意味で周りの皆は必ず何らかの意味で自分よりも優れていて、異なる視点から物事を見てくれています。そういう意味で、開発的な文脈においては知的謙虚さだけでなくチームが持つ知的な多様性、集団の持つ知性に対する信頼を含んでおり、所謂レビュー文化にもつながる考え方になります。

変幻自在

固定化した立場は関係ない。LeadershipとFollowershipを兼ね備え、状況に応じた働きを

静的な組織上の設定や主として担っている役割・立場に固執せず、事業成長や顧客への価値のデリバリーを最大化するために今できることは何か?というスタンスで各人が積極的にボールを取りに行くこと、そのためには必ずしも全てのことについて所謂職位の高い人間が考えて決めるという設計でなく状況や案件に応じてリーダーシップが柔軟に設定される考え方、また一度リーダーシップが明確になったのなら周囲は役割や立場関係なくそのリーダーシップを発揮しやすいよう、主導権の握りあいや自身の主張に対する執着を捨て全力で支援していく姿勢を示しています。また、そのために自分自身の専門性からくる思い込み・バイアスを客観視しそこから自由でいる意識も重要ではないかと感じています。

例えばスクラムのプラクティスで開発を進めた時に起きがちなこととして、役割としてプロダクトオーナーやスクラムマスターというものが明確になっている分業務の分担は明確になりますが、提供する価値の検討や優先順位の整理について、あるいはレトロスペクティブのようなプラクティス運用の改善など、それぞれに主幹する役割の人はいてもチーム全体として気づいたことがあれば各自から主体的に提起・場合によっては実践まで巻き取っていってよいことです。

他人の仕事を奪ってまでやるということではないため、主幹者に対するフォロワーシップを最大限持ちつつボールが落ちそうな状況を見たらすかさずリーダーシップを発揮していく、そういう全体最適感のある越境的な動きを推奨しています。

情報対称性

格差・階層・裏表のないオープンな組織をつくるのは、自分だ

一般的には「情報の非対称性」という状況の説明に使われる表現であり、明確な意図を持った造語としてvalueに入れています。そもそも、組織を構成する全ての人間間において発生する情報の非対称性を解消するというのは読心装置でも発明しない限り不可能な達成不能の概念であって、それでも少しでもその状態に近づけていく意志を込めてこのような造語を設定しています。相互に持っている情報や認識の共有・同期が個々人の自律的な行動と意思決定に不可欠であるという大前提と同時に、組織で発生する不首尾や課題について個々人の能力やメンタリティの問題に安易に結び付けず、組織としての構造・システムの問題として取り組んでいくことも意図しています。

無知の知と同様レビュー文化に通じるvalueでもありますし、チームとして進捗状況を可視化し良いことも悪い状況も積極的に全体に対して共有していくスクラムにおける透明性のあり方、単なる形式としての資料第一主義でなく暗黙知を減らし何か行動を起こすための初速を最大化する活きたドキュメンテーション文化など、開発に関する積極的な情報共有は常に求められています。


初回からあまり技術的でない内容になってしまいましたが、開発の文脈でvalueを発揮するとしたらどのような観点があるのか?ということを改めて深く考える機会になりました。組織の文化を作っていくことやアイデンティティを明確にしていくことはともすれば事業成長のための具体の活動とは独立したものとして捉えられ、結果として優先順位を低くつけられるケースもままあります。

しかし、事業成長の源泉になる顧客への提供価値を最大化するためには、自分達が何者でありどういう姿勢や価値観に基づいて価値を作り提供していくのかを定めそれをぶらさず行っていくことこそが最も重要なことでありそれでこそ高い成果につなげていけると考えています。valueをはじめとして組織や働き方に対してカケハシがどのような考え方を持っているか興味を持ってくださった方は、とりあえず話を聞いてみたいぐらいの温度感で構いませんので是非気軽にお問い合わせ頂ければと思います。

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