
2026年7月、カケハシへ入社したのは、テック業界の最前線を走ってきた竹田祥(たけだ・よし)。彼が薬局業界に見たのは、あまりに身近で意識すらしていなかった領域に眠る、大きな可能性でした。「生半可な気持ちでは転職できない」と言っていた彼の背中を押したのは何だったのか? そして、カケハシで何を実現したいのか? 彼のカケハシにかける覚悟に迫ります。
決め手になった「自分ごとになれる領域」と「AI活用の伸びしろ」

──── freee(フリー株式会社)で常務執行役員VPoEとして活躍していた竹田さんが転職されたきっかけは何だったんでしょうか?
竹田:
freeeには8年近く在籍していましたが、本当に素晴らしい会社だと感じています。カルチャー、人、プロダクトのどれも優れていました。そのうえで、転職のきっかけになった感情がありました。freeeのCEOやCTOと一緒に仕事するなかで芽生えたものです。二人はfreeeの創業メンバーなのですが、創業から10年以上経った今でも誰よりもパッションが強く、「スモールビジネスをよくしたい」という想いが内面から湧き出ている。その姿はかっこよかったし、羨ましさを感じることもありました。
自分もfreeeのミッションや社会的な意義には非常に共感していましたが、人生の後半に差し掛かるなかで、自分にとっても「彼らのように強いパッションが湧き出てくるような仕事」を改めて探してみたいと考えて、さまざまな企業にお話を聞いてみることにしました。
──── カケハシへの入社を決めるまで半年ほどの時間を要したと聞いています。
竹田:
トータルで数十社からお話を伺いました。幅広くいろいろな視点をインプットする期間になりましたね。そのなかで、自分にとっての転職活動の軸も固まってきました。
──── どんな軸だったのか教えてください
竹田:
全部で3つあります。
1つ目は、自分にとって大事な人や物につながる仕事であること。これまでの仕事で感じたことを棚卸ししてみた結果、自分が一番やりがいを感じるのは「プロダクトを使ったユーザーにポジティブな変化が起きたとき」だと改めて気づきました。
その結果をもとに「自分がつくったプロダクトを通して身近な人にポジティブな変化を起こせたら最高なのでは」と考えるようになり、最終的には自分の家族の幸せにつながるようなプロダクトづくりができる会社を選ぼうと決めました。
2つ目は、社会的な意義が大きく、高難易度なチャレンジができること。40歳を超え、さまざまな業務やポジションを経験してきたので少しペースを落として働くことも考えたのですが、転職活動を進めていくなかで「シンプルにプロダクト開発者としてまだまだ成長したい」と思っている自分の感情に気づきました。年齢を重ねても成長できる環境として、社会的な意義が大きく、難易度が高い挑戦を続けている企業に惹かれました。
3つ目は、AIを活用した際のインパクトが大きい領域であること。freee時代もCAXO(Chief AI Transformation Officer:最高AI変革責任者)としてAI活用を推進してきましたが、まだまだAIを使いこなすハードルが高いと感じているお客さまも多くいらっしゃいました。実際にお客さまの現場に行き、活用状況をヒアリングさせていただくなかでも「AIを使いたいけど、どうやって使えばいいのかわからない、世の中の流れに取り残されるような不安がある」といった声を聞いていました。
テック企業にいると「AIを使って当たり前」のような雰囲気を感じますが、テック業界以外ではまだまだAIが浸透していない現場も多くあります。逆の言い方をすれば、プロダクトを通じて誰もが自然にAIの恩恵を受けられるような状況をつくれたら、社会的なインパクトはとてつもなく大きくなるはずだと感じています。
カケハシの選考で薬局に関する情報を伺った際に驚いたのは、薬局は全国に6万店舗以上あって、そこで年間9億枚近い処方箋が扱われているということ。つまり、それだけのデータが、まだ十分に活かしきれていないわけです。しかも、人の健康にまつわるデータですからね。「これだけ身近なのに自分は意識していなかった。非常に大事な領域だ」とテンションがすごく上がったのを覚えています。
──── そうしてカケハシに辿り着いたわけですね
竹田:
そうですね。転職活動をするなかで、どの会社も良いプロダクトをつくるために本当に難しく大事なチャレンジをしていると感じましたし、魅力的なプロダクトや事業も多くありました。「生半可な気持ちでは転職できない」とも思いましたね。
ありがたいことに複数の会社からオファーをいただいたのですが、最終的には、先ほど挙げた転職の軸に合致し、そして特に自分のなかで大事にしたかった家族の幸せにつながるという点で、カケハシに自分の人生をベットしてみたいと感じ、入社を決めました。
転職にあたって常日頃から相談していた妻からは「なんとなくだけど選んだ理由がわかるし、カケハシを選びそうだと思っていた」ということを言われました(笑)
薬局業界には、カケハシが新しい価値を発揮していく土壌があった

──── 入社の決め手のひとつだった「AI活用のインパクト」という軸では、入社後どう感じましたか?
竹田:
率直に「まだまだやれる余地がある」と感じました。
昔ながらのシステムが多く、オンプレミス(外部のネットワークにつながっていない環境)で動いている端末もたくさんある。そういったシステム上の制約からAIを積極的に活用できない状況もあり、思った以上に伸びしろは感じました。
──── 伸びしろについてもう少し詳しく教えてください。
竹田:
薬局は「お薬を受け取る場所」と思われがちですが、実際には専門的な判断が連続する現場です。
たとえば、処方内容に疑問がある際に医師へ確認する「疑義照会」は、法律で定められた重要な業務です。また、保険診療における薬剤の提供や、薬学的管理に伴う調剤報酬(保険から薬局に支払われる報酬)の点数計算に関する複雑なルールも正確に把握し、運用しなければなりません。
これまではベテラン薬剤師のような方がご自身の経験やノウハウで対応されていた部分も、AIを活用することで確認の負担を減らしたり手助けすることができるはずだと考えています。
そういう意味で、AI活用によって「安心感」を提供できる価値はたくさんあります。
──── 専門性の高い分野へ挑戦することへの不安はありましたか?
竹田:
めちゃくちゃありました。医療や薬事などのドメインの知識はないし、医療という領域自体が変化に慎重で、自分にとっては敷居が高い世界だと感じていました。「現場の方たちもITを歓迎していないのではないか」とすら思っていました。
ところが真逆で。入社から1ヶ月の間に、ユーザー薬局さまを7〜8店舗ほど訪問しましたが、薬局で働く方たちは皆さん「薬局内の業務の流れをより効率的にしたい」「患者さまにとってより良い体験を提供したい」と思っている。そのために新しいシステムを導入したり、AIを使って業務を効率化することに対する関心も非常に高いと感じました。
私のような医療や薬事の素人が話を伺いに行っても、「現場のことはなんでも教えるから、良いプロダクトを作ってね」と声をかけてくれるんです。
そうやって受け入れてくれることがシンプルに嬉しかったし、現場をしっかりと理解して良いプロダクトをつくろうというパッションが強く湧いてきました。
薬局業界全体で人手不足に直面しているし、高齢化社会で薬剤師の皆さまの業務は多忙を極めている。「ITの力でよくなったらいいよね」という願望を持っている方は多いです。入社して1ヶ月足らずで、カケハシのようなIT企業が新しい価値を発揮していく土壌があることを目の当たりにすることができました。
一方で、ミスが起きると命に関わるので、絶対に間違えられない緊張感はあります。データの正確性や処理の正確性などは他のSaaSプロダクトよりも厳密に扱わなければなりません。
実際に薬局訪問をするなかでも、薬剤師の皆さまはもちろん、事務の皆さまも強い責任感のもと業務に打ち込まれている姿が印象的で、気持ちを引き締めてプロダクトをつくっていく必要性を感じています。
カケハシには本当に優秀なエンジニアが集まっている

──── カケハシ社内の印象はいかがでしたか?
竹田:
入社してまず驚いたのは、開発チームがユーザー薬局さまの現場や薬剤師、患者さまへの深い理解と強い関心を持っていることです。薬局の業務をサポートすることで医療体験をよくしていくということに本当に真摯に向き合っています。
一方で、プロジェクトマネジメントやプロジェクト内での情報共有などについては、まだ伸びしろがあると感じています。私のこれまでの経験を活かして全体の交通整理を行い、プロダクトとして注力すべきポイントを絞り込むことで、開発メンバーが迷いなく開発に専念し、よりいきいきと活躍できる環境をつくっていきたいと考えています。
──── エンジニアのレベルについてはどう感じていますか?
竹田:
間違いなく高いレベルにあると感じています。人の健康に関わる機密データを堅牢に扱う「守り」の開発と、AIを活用した新規性の高い「攻め」の開発。その両面をこなせる技術力と適応力を備えた組織です。
また私のように新しく入社したメンバーも多いのですが、さまざまな領域で活躍されてきた驚くようなバックグラウンドを持つ方が多く、非常に大きなポテンシャルを感じています。このメンバーなら本当に価値のあるプロダクトをつくっていけると感じており、ワクワクしています。
──── ご自身のミッションを教えてください
竹田:
まずは新規プロダクトにおけるプロダクトマネージャーのリードを任されています。ただ責務の範囲はそこまで区切っておらず、先ほどお話ししたようなプロジェクトマネジメントに加え、横断的な整理、プロダクト開発の旗振り、実際の機能企画など、プロダクト開発を前に進めるために全方位に対してアプローチしているイメージです。基本的に「組織やプロダクトの状況に応じて必要なことは何でもやる」というスタンスです。
──── VPoEからプロダクトマネージャーという役割の変化を選んだ理由を教えてください
竹田:
大きく分けて2つあります。
ひとつは、AI開発が当たり前になり、開発者の価値が「コードを書くこと」から「プロダクトの目的を言語化し、AIに指示を出して価値を生み出すこと」へシフトしていると感じたからです。私自身もプロダクトマネージャーとして動きつつ、メンバーをリードするという役割は、自分の成長にとって非常に魅力的な挑戦でした。
もうひとつは、AIがプロダクトに不可欠な現代において、エンジニアリングの知見とプロダクトマネジメントを融合することの可能性を感じたからです。その二つを融合することで「より速く、より質の高いプロダクトを生み出せるのではないか?」という仮説を自ら実証し、どのような化学反応が起きるのかを体現してみたいと考えています。
──── 今のカケハシに関わる魅力はどこにありますか?
竹田:
今のカケハシは、複数のプロダクトが混在する過渡期にあります。すでに多くのユーザー薬局さまで使われているプロダクトもあれば、私が現在関わっているような完全新規開発のプロダクトもあります。
将来的には、これらすべてのプロダクトをつなぎ合わせ、統合的な価値を生み出すことがカケハシの目標です。フェーズの異なるプロダクトをいかに最速で進化させていくかという「個の進化」と、その先の統合をどう実現するかという「収束」。この両面を意識しながら開発を進めるのは難易度が高いのですが、だからこそ最高におもしろいフェーズだと感じています。
また私が入社した理由でもありますが、この難しいチャレンジの先にある「社会的意義」や「身近な人への影響の大きさ」に、とても魅力を感じています。
プロダクトマネージャーにチャレンジしたいエンジニアへ

──── どういう方に向いている仕事だと思いますか?
竹田:
医療ドメインや薬局に関する知識があるに越したことはありませんが、私自身が未経験だったように必須ではなく、むしろもう少し抽象度の高いスタンス的な部分が重要になってくると感じています。たとえば、知らないことを知ることが好きだったり、実際に働いている現場の方たちになり切って課題に向き合ってみたり……難しい課題にチャレンジすることが楽しいと思える方、現場を知りたいと思う方には、マッチすると思います。
現場に行くと、薬局の皆さまが遠慮なく本音を聞かせてくださるので、ビジネスのために無理やり需要をつくっているわけではない本質的な価値を生み出すことができ、プロダクト開発における大きなやりがいにつながると感じています。
個人的には、健康や医療はすべての人にとって「自分ごと」となります。私だったら、家族……特に妻の日常的な健康は人生の大事なテーマです。
皆さんも薬局や病院で、紙のやり取りや待ち時間を見て「テクノロジーを使えばもっと良くできそう」と感じたことがあるのではないでしょうか。誰にとっても自分ごととなるテーマにダイレクトにアプローチできるのは、非常におもしろいポイントです。
また、これまでお話ししてきたように、AIをはじめとする技術的な要素をプロダクト企画に落とし込む場面が多くあります。
そのため、私のようにエンジニア出身のメンバーがプロダクトマネージャーに挑戦したり、逆にプロダクトマネージャー経験者がテクノロジーをフル活用して機能企画を手がけたりと、お互いの専門領域へ「染み出していく」ことが可能です。
カケハシなら職種の垣根を越えてチャレンジできるので、心からおすすめしたい環境です。
※処方箋枚数は厚生労働省「令和6年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」より。同統計における「処方箋枚数」とは、調剤報酬明細書に記録される処方箋の「受付回数」を合計したものです。
https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/24/gaiyou.html