KAKEHASHI Tech Blog

カケハシのEngineer Teamによるブログです。

スクラムガイドを読む前に知っておきたい基本の考え方

こんにちは。処方箋データ連携チームのエンジニアリングマネージャーをしている吉田です。 普段はスクラムマスターとしてチーム開発に携わっており、スクラムを日常的に実践しています。

また、社内の「アジャイル研究会」にも参加しています。研究会では、アジャイルへの知見を深めたり、各現場のベストプラクティスを共有し合い、社内全体の開発をより良くしていくことを目的に活動しています。 この記事は、その活動の一環として「スクラムガイドを読む前に背景や前提を整理しておくと理解しやすいかもしれない」と感じたことをまとめたものです。

はじめに

スクラムを導入したチームでよく耳にする悩みがあります。

  • スクラムガイドを読んだけれど、内容が理解できなかった
  • 形だけスクラムをやってみたものの、効果を感じられなかった
  • プロジェクトが期待通りに進まず、結局スクラムに不信感を持ってしまった

こうした背景には、 「スクラムを支える前提知識が不足している」 ことが少なくありません。
私自身の経験からも、アジャイルやスクラムへの理解が浅い状態でスクラムガイドを読むと、「どう使えばいいのか」が分からず迷子になってしまうことが多いと感じています。

このような状況を避けるため、スクラム導入時に生じがちな“期待とのギャップ”を減らすためのポイントを整理しました。 これからスクラムを学ぶ方や、すでに導入しているけれど効果に疑問を持っている方の参考になれば幸いです。

想定している読者

この記事は以下のような方を対象にしています。

  • スクラム初心者
    スクラムの基本を学びたいが、スクラムガイドを読んでもピンとこなかった方

  • 導入済みだが課題を感じている方
    スクラムを形式的に実践しているが、なぜやるのか腹落ちしていない方

  • 導入を検討するマネージャー層
    チームにどう根付かせるべきか、学習プロセスを検討している方

  • アジャイル開発に興味のある方
    「アジャイル=スクラム」と誤解している方、背景となる理念を知りたい方

  • スクラムに苦手意識を持っている方
    過去の失敗を振り返り、本質的な理解を深めたい方

スクラムガイドとは?

スクラムガイドは、スクラムを構成する役割・イベント・ルールを定義した公式文書です。 ただし書かれているのはあくまで最小限のルールであり、実際の開発現場で直面する課題への具体的な解決方法までは示されていません。

そのため、前提知識なしに読むと「少し抽象的で分かりづらい」と感じる方もいるかもしれません。

スクラムはアジャイルのフレームワーク

アジャイル開発とは

アジャイルは「変化に柔軟に対応し、継続的に価値を届ける」ための開発手法の総称です。
2001年に発表された アジャイルソフトウェア開発宣言 では以下の価値が重視されています。

  • プロセスやツールよりも 個人と対話を
  • 包括的なドキュメントよりも 動作するソフトウェアを
  • 契約交渉よりも 顧客との協調を
  • 計画に従うことよりも 変化への対応を

これらの背景にある原則は、現在でも多くの現場で有効に機能しています。

スクラムとの関係

スクラムはアジャイルの考え方を実践しやすい「型」です。 アジャイルを再現性高く行うためのフレームワーク、と言えます。

スクラムの導入目的と限界

スクラムを導入すること自体が目的化してしまうと、本来の効果は得られません。

本来の目的は、不確実性の高い開発環境に適応しながら、顧客に価値ある成果をできるだけ早く届けることにあります。
アジャイルの原則はそのための指針であり、スクラムはそれを再現性高く実現するためのフレームワークです。

ただし、スクラムは「銀の弾丸」ではありません。
導入すればすぐにプロジェクトが成功するわけでも、無理なスケジュールが守れるようになるわけでもありません。

重要なのは、スクラムという仕組みを通じて チームの働き方を改善し続ける姿勢 です。

スクラムを効果的に導入するステップ

私がおすすめする進め方は以下の通りです。

  1. アジャイル開発を学ぶ
    アジャイルの理念や背景を理解する

  2. スクラムガイドを読む
    ルールや役割を理解する

  3. 小さく実践してみる
    小規模なチームやプロジェクトで試す

  4. 再度スクラムガイドを読み返す
    実践経験をもとに理解を深める

このサイクルを繰り返すことで、スクラムを単なる『儀式』ではなく、価値あるフレームワークとして活用しやすくなります。

まとめ

  • スクラムはアジャイルの理念を実現するためのフレームワークの一つ
  • スクラムガイドは最低限のルールを示しているだけで、解釈には前提知識が必要
  • 成功の鍵は「導入」ではなく「継続的な学習と改善」

スクラムは「イベントを正しく回すこと」自体が目的ではありません。
大事なのは、不確実性の高い環境であっても、チームが協力し合いながら価値を素早く届け続けられるようにすることです。
スクラムガイドを読む前に、この視点を持っておくと理解が一段と深まりやすいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
この記事が、これからスクラムを学ぼうとしている方の助けになれば嬉しいです。