こちらの記事は カケハシ Advent Calendar 2024 の5日目の記事になります。
1.はじめに
はじめまして。カケハシの新田です。 カケハシでの新たなプロジェクト「Patient Engagement事業」で、Analyticsチームに所属しています。データアナリストとして、データ観点での業務推進や解析などを担当しています。
今日は、その新規プロジェクトにおけるAnalyticsチームの2024年の取り組みについてご紹介させてください。
2.Patient Engagement事業とは
そもそも「Patient Engagement事業」とは?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
カケハシのプロダクトである「Musubi」や「Pocket Musubi」などを活用して薬局・薬剤師の先生から患者さまに情報提供を行うことで、患者さまの行動変容を促進することを目指すプロジェクトです。
患者さまの服薬状況の改善・薬剤の適正利用の促進・重症化する可能性のある患者さまへの疾患啓発につなげるなどの患者さまの行動変容や、薬剤の価値最大化、患者さまの再発・重症化回避などによるアウトカムの改善などを目指しています。
「Patient Engagement事業」について詳しく知りたい方は、よろしければ下記記事もご覧ください!
3.Analyticsチームについて
Analyticsチームについてもご紹介させてください。
Analyticsチームはデータアナリスト・データサイエンティスト・データエンジニアからなるチームです。2024年の1年で人数も2名から5名と増え、体制が急拡大したチームです。
チームの目的である「患者さまの行動変容がどのように変化したかをデータで解析し、インサイトを得る」に向けて、下記のような業務を実施しています。
- データ解析に必要なデータ基盤の整備
- データ解析・レポート作成
- その他、施策の効果検証など
次に、チームが抱えていた課題感と取り組みについて紹介していきます。
4.当時の課題
2024年1月から体制が急拡大したチームですが、当時我々が抱えていた課題を2つ挙げていきます。
①KPIの設定が最適化されていなかった
「患者さまの行動変容がどのように変化したかをデータで解析し、インサイトを得る」とはいうものの、そのための測定するKPIの検討が十分とは言えない状態でした。
また、個人がカスタマイズを加えながら解析を行うため、最適な解析条件ではないケースも発生していたと思います。さらに、品質が担保されない・レビューに時間がかかるなどの課題も抱えていました。
②様々な施策や試みの運用が属人化していることがあった
様々な施策や試みを複数のチームで運用する中で、一部の運用が属人的になっているケースが見られました。この結果、運用や分析の品質が安定しないリスクが生じるだけでなく、特定の業務に過剰な工数がかかり、重要な部分に十分なリソースを割けなくなる可能性がありました。
さらに、属人的な運用では得られたインサイトが次の施策に効果的に活用されにくい状況も懸念されました。
チーム体制が急拡大している中、これらの課題によって業務負荷がさらに増大し、必要なタスクに十分な時間をかけられない状況が迫っている状態でした。
5.そこで、我々が実施したこと
①KPIの深堀・検討
現在も継続している取り組みですが、施策や試みの仮説を検証し次に活かすために適切な指標を精査・議論しました。
例えば、患者さまのアドヒアランスを測定する場合、
- PDC(Proportion of Days Covered)
- MPR(Medication Possession Ratio)
- DoT(Days of Therapy)
- 継続率
- 投与量
- 来局間隔....
など、医療の世界にはさまざまな指標があります。
Analyticsチームだけでなく他チームのメンバーも交え、取り組みの効果を評価するための指標がステークホルダーにとって分かりやすく、かつ今後の改善につながるものとなるよう議論を重ねました。
②適切なKPIをどういうロジックで算出するかを決める
指標が決まっても、それだけでは不十分です。取り組みを評価するには、多くの場合、「比較」が必要です。
介入群・対照群を分ける「施策の実施有無」には時にバイアスがかかることもあるため、「取り組みによって生まれた差分」なのか「元から介入群がもつ属性によって生まれた差分」なのか慎重に見極める必要があります。
例えば、薬局・薬剤師の先生からの情報提供によって患者さまの行動変容を促進する取り組みでは、「元々アドヒアランスが良かったり行動変容が起こりやすかったりする患者さまを中心に情報提供しているから、結果として介入群の行動変容が起こっているように見えるだけ」という可能性があります。
上記を回避するため、「傾向スコアマッチング法」という手法でKPIを評価することにしました。介入群の属性に合わせて対照群をマッチングさせ、介入群と対照群の属性の分布を揃えたうえでKPIを比較することで、取り組みによる効果を測るものです。
さまざまな効果推定の手法がある中、我々の取り組みを評価し、取り組み結果をよりわかりやすく表現できる方法をAnalyticチーム内外と議論し、方針を決定しました。
こちらの算出ロジック検討については12月13日(金)のアドベントカレンダーの記事で詳細が語られる予定なので、ぜひご覧ください!
③プロジェクト運用のガイドライン作成
属人的な運用から脱却するために、プロジェクト運用のガイドラインを作成しました。
プロジェクト開始前から終了までに実施すべきこと・確認するべきことを羅列し、チェックリスト形式にしたものです。
解析要件の細かなチェック項目から、ステークホルダーとの会話で握っておくべきことまで網羅することで、ミスやインシデントを起こしにくくしながら、一部に過剰な工数を割くことを避け、重要な部分にリソースを割く状況を目指しました。
さらに、こういうものって、徐々に運用されなくなってしまう......というのがあるあるだと思うのですが、アシスタントの方を巻き込んで定期的に運用をチェックする仕組みも整備しました。
④プロジェクト振り返りの開始
プロジェクトが終了後、やりっぱなしでは得られたインサイトや反省を次に活かせません。したがって、関係メンバーで振り返る時間を設けました。
さらに、振り返り項目は定量的に計測できるような形で蓄積しています。将来的には、○○のようなプロジェクトは△△という傾向があった、など定量的にプロジェクトを横断で振り返ることを見据えています。
また、関係メンバーでの振り返りでは、主にプロジェクトの運用について振り返りますが、Analyticsチームのみでの振り返りも行っています。
具体的には
- 整備・改善したほうが良いデータ基盤
- 解析の中でうまれたヒヤリハットとその改善策
- より効率的な解析方法や分析Tipsのシェア
などを振り返ることで、1人の解析担当者が得られた知見を共通知化することを目指しています。
6.おわりに
新規事業のAnalyticsチームで2024年、品質担保に向けて取り組んだことを紹介しました。
引き続き、事業の価値を最大化させることを目指して、2025年も邁進します!
読んでくださってありがとうございました!